10~3, 準備書面
副本
平成21年(ワ)第11056号
個人情報漏洩等公表請求事件
原 告 M子
被 告 株式会社 みずほ銀行
第1準備書面
東京地方裁判所民事第50部いA係 御中
平成21年6月10日
原告 M子
A 被告本案前の答弁に対する反論
{1} 被告は,答弁書2ページ下から9行目において,「実定法上の根拠を有するものでなく,法律上保護された利益ではない」と主張している。
実定法上の根拠としては,民法第202条にいう本権の訴えがあげられる。
占有者が,その占有を妨害されたときは,占有保持の訴えにより,その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。占有訴権に関する規定の一つである。
民法198条の占有保持の訴えは,通常の物権における物権的請求権(妨害排除請求権)に相当する。占有訴権は,民法207条の通り,「占有を妨害され又は妨害されるおそれがある場合に,占有者が妨害者に対して妨害の排除を請求する訴えの提起ができる権利」であり,物権的請求権という条文はないものの,占有権よりさらに強い物には,当然に占有訴権同様の権利があってしかるべきとの考え方から認められている。
物権は,物を直接排他的に支配する権利であるところから,その直接支配に障害があるときには,物上請求権が発生する。妨害されれば妨害排除請求,妨害のおそれがあれば妨害予防請求できるのと同様に,人格権にも同じ働きがある。
{2}被告は,2ページ下から3行目 「人格権に基づく妨害排除予防請求権と公表請求権は,まったくの別物である」と主張している。
しかし被告の主張の中で,同義でない理由や根拠が述べられていない。
土砂崩れに対する土砂除去請求権,倒木に対する倒木除去請求権,道路通行に対する指定道路通行請求権,住民基本ネットワークにおいて住基ネット離脱請求権と通常は表記しない様に,単に文言の置き換えを行ったに過ぎず,言葉の綾であり,詭弁を弄し屁理屈をこじつけている。
{3}判例を示す。
●長良川河口堰建設差止請求控訴事件判決
名古屋高等 平成10年12月17日 人格権に基づく差止請求,妨排除請求
●大阪国際空港訴訟事件最高裁判決 昭和56年12月16日
人格権又は環境権に基づく妨害排除又は妨害予防の請求
●位置指定道路につき人格権に基づく通行権判決
東京地裁 平成13年1月17日判決
●JR西日本(受動喫煙)事件 大阪地裁 平成16年12月22日
人格権に基づく妨害排除
●産業廃棄物最終処分場建設等差止請求事件千葉地裁木更津支部
平成17年5月12日 人格権(身体的人格権,平穏生活権)による妨害予防請求権
●諫早湾干拓事業訴訟平成20年6月27日 佐賀地裁
国側に立証責任,漁業権,人格権,環境権及び自然享有権に基づく請求
●住民基本ネットワーク差止訴訟 名古屋高裁金沢支部
平成18年12月11日判決 人格権としてのプライバシー権に基づく妨害排除請求権又は妨害予防請求権によりその差止め等の救済
●謝罪広告等請求事件韓国籍男性による日本名読みによる氏名権侵害
最高裁判所第三小法廷 昭和63年2月16日
●横田基地公害訴訟東京高等裁判所 昭和62年7月15日
人格権,環境権,生活権に基づく侵害行為差止請求権を認める
●フローリングによる騒音被害等を理由に慰謝料請求や復旧工事の施工を請求
東京地方裁判所八王子支部 平成8年7月30日判決
これらの判決は一部である。
東京高等裁判所昭和45年(ラ)第197号 同年4月13日第3民事部決定
「エロス+虐殺」事件の判決理由の中で,人格権に基づく妨害排除予防を述べている。
憲法判例百選ⅠP.140佐藤幸治解説
{1}人格的利益を侵害された被害者は,加害者に対して,現に行われている侵害行為の排除を求め,或は将来生ずべき侵害の予防を求める請求権をも有するものというべきである。高裁決定は続けて{2}表現の自由の保障との調節,{3}人格権を侵害される側の不利益と侵害する側の不利益との調節の必要性についても論じている。
人格権とは,人が自らを直接排他的に支配する権利と理解することが出来る。他人の行為を介在しない点で,それは物権に似ていると言える。物権は物を直接排他的に支配する権利であるところから,その直接支配に障害があるときには,物上請求権が発生する。
妨害されれば妨害排除請求,妨害のおそれがあれば妨害予防請求できるのと同様に,人格権にも同じ働きが生じる。
騒音,日照などの環境権,漁業権,人格権に基づいた物上請求が認められている。数多くの人格権に基づく妨害排除予防の請求が却下されず,司法の場で審理され,判決を得ており,もはや,既成の概念と言える。
妨害排除予防請求権そのものの有無ではなく,妨害排除予防請求権が認められるか否かが争点となるべきである。
B 本案前答弁の理由 第4被告の主張に対する反論
{1} 答弁書4ページ下段,被告は「個人情報が漏洩されたことをもって人格権侵害であると主張するのであれば,すでに個人情報漏洩による人格権侵害は終了しており」と主張している。
この部分は,原告の主張と相違しており誤った解釈である。訴状7ぺージ個人情報漏洩で述べたように,本侵害行為は3つの要素で構成されている。
1.個人情報漏洩,2.漏洩調査,3.管理体制瑕疵であり,このうちの3.違法な個人情報管理体制は,現在も継続されている。O行員による漏洩ではなく,被告銀行による違法な個人情報取扱が継続されているのである。侵害行為は漏洩のみあらず,その背景にある管理システム瑕疵も重大な侵害行為である。
{2} 被告答弁書3ページ目上段,本案前答弁の理由に対する反論
被告は,「本案判決は侵害された権利救済にならず,当該紛争を解決することは期待できないのであるから,漏洩事実を公表させる本案判決を求める訴えの利益を認める余地はない」と主張している。
しかし,なぜ権利救済にならないのか,解決期待できないのかという理由・根拠が欠落している。
そもそも漏洩は無く権利侵害も無い,加えて,侵害行為は終了していると誤って解釈した被告の主張と矛盾している。
本訴訟の訴えの利益は,漏洩の再発防止,抑止であり,法益は人格権である。
なぜ公表を求めるかという理由について述べる。
被告みずほ銀行は,個人情報保護法によって安全管理措置義務が,民法の準委任によって善意管理注意義を負っている。
個人情報漏洩事案の対処について,個人情報保護法,金融分野におけるガイドライン第22条-2に,次のように定められている。
「金融分野における個人情報取り扱事業者は,個人情報の漏洩事案等の事故が発生した場合には,二次被害の防止,類似事案の発生回避などの観点から,漏えい事案等の事実関係及び再発防止策等を早急に公表することとする。」
また他の公表義務は,会社法・内部統制の情報伝達,民法上の信義則がある。
原告が真に望む解決の到達点は,個人情報保護法に適う顧客情報データベースの完備である。
準委任契約上の完全履行請求権から,システム補完を求めることも,間接執行によれば,理論的には可能である。しかし,被告の企業体質・経緯から,個人情報保護法施行後6年の長きにわたり放置された管理体制が,今日明日に改変されることは期待できない。
実効性に疑問があり,例え適ったとしても日数を要するとは,たやすく想像が出来る。
公表により多くの国民・契約者に知らしめることによって,心理的緊張感が生まれ,行員意識改革が進み漏洩に対する抑止として働く。また被告銀行本部に対しても,国民・契約者の目が良質な圧力となって,自発的にシステム改変がなされ,個人情報保護法に適う取扱いとなる。
個人情報漏洩の公表の利点は即効性と抑止力であると考える。
隣地から土砂が崩れて来た,または,今まさに崩れて来る危険がある,物権の円満な実現が妨害され,またはされようとしているのであれば,土砂を除去し防護対策を求めることができる。原告の人格権も同様である。人格権の円満な実現のために,漏洩と管理体制不備の公表は必要不可欠な請求である。
C 補足
{1} 訴状23ページ上段,第7アクセスログについての部分で,印刷のみ不可としたシステムは,少数の人権を切り捨てたものであるとした主張について,訂正をする。
本年4月17日,三菱UFJ証券は同社のシステム部長代理が不正に顧客情報データベースから148万人の顧客情報を持ち出し,多数の名簿業者に売却したことを明らかにした。他社員のID,パスワードを使用し,不正アクセス禁止法の疑いも持たれている。
この部長代理のように,アクセス権限上位者の不正の場合,印刷というレトロティックな持ち出し方法ではなく,他の媒体で持ち出すとも不可能ではない。
従って,みずほ銀行の印刷のみを不可としたシステムでは,上位アクセス権限者によれば大量持ち出しの危険性も残されていると言える。アクセスログによって,上位アクセス権限者を含む全行員の履歴を調査が不可能な現状では,大量持ち出しによる多数の人権侵害の可能性も否定出来ない。
{2} 貸金業法改正について
本年6月1日から貸金業法が改正され,クレジット業界と銀行金融機関の情報相互利用が開始されている。
クレジット情報いわゆるホワイト情報からは,買い物履歴,年収まで詳細なデータがリアルタイムで更新され,金融機関からの検索が可能となった。
銀行やクレジットカード,信販会社などが加盟する個人信用情報センターのCICと,消費者金融などの貸金業者などで構成される日本個人情報機構(JIC)が管理している個人信用情報がオンラインで結ばれたのである。いわゆるブラックリストだけが覗けた状況から,「いつ,どこで,いくらの買い物でクレジットカードを使ったか」といったホワイト情報まで手に入り,おおよその暮らしぶりも推察できる。
データベースのマッチングによって,さらに巨大なデータベースにアクセス可能となった現状では,情報の玄関口である銀行の管理体制は,より重要な意味を持ち,責任も重くなったと言える。
係る現状で,みずほ銀行の行員のアクセスログが調査出来ない管理体制は,一度漏洩事故が起きれば,大量かつ詳細なデータの漏洩に繋がり,取り返しの付かない人権侵害が起きる。
{3} 本年4月6日,架空の米国債の投資話を持ちかけて現金をだまし取ったとして,元みずほ銀行本店調査役が詐欺容疑で逮捕された。自行員の良心,性善説に頼るシステムは,個人情報管理者としての責務を放棄しており違法である。
D 争点について
本訴訟の争点は,先ず初めに,{1}漏洩の有無 {2}個人情報取扱システムの2点の事実関係の確認がなされ,次いで請求の合理性や手段の妥当性など二段階で進められるべきである。
事実確認の後に,原告の受忍限度,被告銀行の違法性,また私人間の権利衝突であるから,漏洩を公表することの利益不利益,公表しないことの利益不利益が公の福祉,公の秩序などによって比較衡量がなされ,また被告銀行の公表義務,管理責任なども考慮された上で司法の判断を仰ぐべきである。
E 求釈明
原告は,被告の平成21年5月14日付答弁書に対して以下のとおり,釈明を求める。
釈明を求める理由
個人情報の取扱いは,まさに被告銀行に委ねられている。
「委ねる」と言う字が示す通り,準委任の関係にあると解される。受任者たる被告銀行は,善意管理注意義務(民法644条)及び,報告義務(同645条)を負う。準委任は手段債務であるから,個人情報の取扱いのプロセスに対しての責務であると言える。
漏洩の有無の立証責任についても,個人情報は被告銀行の管理下にあり,取扱いに関する情報は全て被告が握っているのであるから,原告の立証活動は限界である。
本来,立証は原告の責任であるが,違法な個人情報取扱によって,アクセスログという証拠が記録されていない,また記録されていても調査不能の状態である。
被告銀行の責任において立証が不能になり真偽不明に陥っているのであるから,立証妨害の法理が適用されるべきである。
原告は,一年近くに亘り,被告銀行本店に対し,漏洩調査を依頼し交渉したが,有効な返答は得られず,止む無く訴訟に至った経緯である。
本訴訟の重要な争点は,漏洩の有無と管理体制であるから,被告は,訴訟上の信義則からも,積極的に根拠,理由を明らかにされたい。
{1} 被告は,答弁書において,漏洩事案は無かったと主張している。しかし,前田全銀協会長の会見から漏洩時にアクセスログが整備されていなかったこと,またT行員の発言からは,アクセスログは記録していたが,支店ごとに媒体として残すに止まり,調査が不可能であると述べている。このことから,物理的な漏洩調査は不可能であったと解釈できる。実質的な調査らしきものは,支店長による聞き取り調査のみである。
民訴規則79条3項は,「準備書面において相手方の主張する事実を否認する場合には,その理由を記載しなければならない。」と定められている。規定に照らせば,被告の答弁は不十分なものである。
そこで,
(1)漏洩事案が無かったと主張される根拠について釈明を求める。
(2)同時に,物理的な根拠を提供されたい。
{2} (3)平成18年7月5日(O行員八重洲口支店着任日)から同年9月5日(I氏が原告の個人情報を適示した日)の間,アクセスログは残されているのかお伺いしたい。
前田会長の会見から,物理的な人月工数を計算から,全アクセスログの取得は不可能であると考えるが,被告はログの存在を主張している。漏洩時のシステムについて,釈明を求める。
{3} (4)現行のシステムについて管理体制について全行員のアクセスログはデータベース化されているのか否か,釈明を求める。
具体的には,昨年8月14日のT行員の会話の後,変更があったか否かである。新宿支店後の全銀協前田会長会見,T行員の発言は,外部の人間に対して行ったものである。同等のレベルの発言であれば,営業秘密,セキュリティ,保守の問題には抵触するものではないと考える。セキュリティを盾に返答を控えられるのであれば,被告銀行グループのトップと本店行員は,営業秘密を外部に漏らしたことになり矛盾が生じる。個人情報管理責任者として,真摯な返答を望む。
{4} 答弁書3ページ目上段,本案前答弁の理由において,被告は,「本案判決は侵害された権利救済にならず,当該紛争を解決することは期待できないのであるから漏洩事実を,公表させる本案判決を求める訴えの利益を認める余地はない」と主張しているが,理由及び根拠が述べられていない。
{5} 上記主張の理由・根拠及び,紛争解決を期待できる方法を示されたい。
以上,(1)から(5),5点について被告の釈明を求める。
以上
※丸付き数字は、文字化け防止のため, {1}のように、{ }付き数字に置き換えました。
10~3, 準備書面
副本
平成21年(ワ)第11056号
個人情報漏洩等公表請求事件
原 告 M子
被 告 株式会社 みずほ銀行
第1準備書面
東京地方裁判所民事第50部いA係 御中
平成21年6月10日
原告 M子
A 被告本案前の答弁に対する反論
{1} 被告は,答弁書2ページ下から9行目において,「実定法上の根拠を有するものでなく,法律上保護された利益ではない」と主張している。
実定法上の根拠としては,民法第202条にいう本権の訴えがあげられる。
占有者が,その占有を妨害されたときは,占有保持の訴えにより,その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。占有訴権に関する規定の一つである。
民法198条の占有保持の訴えは,通常の物権における物権的請求権(妨害排除請求権)に相当する。占有訴権は,民法207条の通り,「占有を妨害され又は妨害されるおそれがある場合に,占有者が妨害者に対して妨害の排除を請求する訴えの提起ができる権利」であり,物権的請求権という条文はないものの,占有権よりさらに強い物には,当然に占有訴権同様の権利があってしかるべきとの考え方から認められている。
物権は,物を直接排他的に支配する権利であるところから,その直接支配に障害があるときには,物上請求権が発生する。妨害されれば妨害排除請求,妨害のおそれがあれば妨害予防請求できるのと同様に,人格権にも同じ働きがある。
{2}被告は,2ページ下から3行目 「人格権に基づく妨害排除予防請求権と公表請求権は,まったくの別物である」と主張している。
しかし被告の主張の中で,同義でない理由や根拠が述べられていない。
土砂崩れに対する土砂除去請求権,倒木に対する倒木除去請求権,道路通行に対する指定道路通行請求権,住民基本ネットワークにおいて住基ネット離脱請求権と通常は表記しない様に,単に文言の置き換えを行ったに過ぎず,言葉の綾であり,詭弁を弄し屁理屈をこじつけている。
{3}判例を示す。
●長良川河口堰建設差止請求控訴事件判決
名古屋高等 平成10年12月17日 人格権に基づく差止請求,妨排除請求
●大阪国際空港訴訟事件最高裁判決 昭和56年12月16日
人格権又は環境権に基づく妨害排除又は妨害予防の請求
●位置指定道路につき人格権に基づく通行権判決
東京地裁 平成13年1月17日判決
●JR西日本(受動喫煙)事件 大阪地裁 平成16年12月22日
人格権に基づく妨害排除
●産業廃棄物最終処分場建設等差止請求事件千葉地裁木更津支部
平成17年5月12日 人格権(身体的人格権,平穏生活権)による妨害予防請求権
●諫早湾干拓事業訴訟平成20年6月27日 佐賀地裁
国側に立証責任,漁業権,人格権,環境権及び自然享有権に基づく請求
●住民基本ネットワーク差止訴訟 名古屋高裁金沢支部
平成18年12月11日判決 人格権としてのプライバシー権に基づく妨害排除請求権又は妨害予防請求権によりその差止め等の救済
●謝罪広告等請求事件韓国籍男性による日本名読みによる氏名権侵害
最高裁判所第三小法廷 昭和63年2月16日
●横田基地公害訴訟東京高等裁判所 昭和62年7月15日
人格権,環境権,生活権に基づく侵害行為差止請求権を認める
●フローリングによる騒音被害等を理由に慰謝料請求や復旧工事の施工を請求
東京地方裁判所八王子支部 平成8年7月30日判決
これらの判決は一部である。
東京高等裁判所昭和45年(ラ)第197号 同年4月13日第3民事部決定
「エロス+虐殺」事件の判決理由の中で,人格権に基づく妨害排除予防を述べている。
憲法判例百選ⅠP.140佐藤幸治解説
{1}人格的利益を侵害された被害者は,加害者に対して,現に行われている侵害行為の排除を求め,或は将来生ずべき侵害の予防を求める請求権をも有するものというべきである。高裁決定は続けて{2}表現の自由の保障との調節,{3}人格権を侵害される側の不利益と侵害する側の不利益との調節の必要性についても論じている。
人格権とは,人が自らを直接排他的に支配する権利と理解することが出来る。他人の行為を介在しない点で,それは物権に似ていると言える。物権は物を直接排他的に支配する権利であるところから,その直接支配に障害があるときには,物上請求権が発生する。
妨害されれば妨害排除請求,妨害のおそれがあれば妨害予防請求できるのと同様に,人格権にも同じ働きが生じる。
騒音,日照などの環境権,漁業権,人格権に基づいた物上請求が認められている。数多くの人格権に基づく妨害排除予防の請求が却下されず,司法の場で審理され,判決を得ており,もはや,既成の概念と言える。
妨害排除予防請求権そのものの有無ではなく,妨害排除予防請求権が認められるか否かが争点となるべきである。
B 本案前答弁の理由 第4被告の主張に対する反論
{1} 答弁書4ページ下段,被告は「個人情報が漏洩されたことをもって人格権侵害であると主張するのであれば,すでに個人情報漏洩による人格権侵害は終了しており」と主張している。
この部分は,原告の主張と相違しており誤った解釈である。訴状7ぺージ個人情報漏洩で述べたように,本侵害行為は3つの要素で構成されている。
1.個人情報漏洩,2.漏洩調査,3.管理体制瑕疵であり,このうちの3.違法な個人情報管理体制は,現在も継続されている。O行員による漏洩ではなく,被告銀行による違法な個人情報取扱が継続されているのである。侵害行為は漏洩のみあらず,その背景にある管理システム瑕疵も重大な侵害行為である。
{2} 被告答弁書3ページ目上段,本案前答弁の理由に対する反論
被告は,「本案判決は侵害された権利救済にならず,当該紛争を解決することは期待できないのであるから,漏洩事実を公表させる本案判決を求める訴えの利益を認める余地はない」と主張している。
しかし,なぜ権利救済にならないのか,解決期待できないのかという理由・根拠が欠落している。
そもそも漏洩は無く権利侵害も無い,加えて,侵害行為は終了していると誤って解釈した被告の主張と矛盾している。
本訴訟の訴えの利益は,漏洩の再発防止,抑止であり,法益は人格権である。
なぜ公表を求めるかという理由について述べる。
被告みずほ銀行は,個人情報保護法によって安全管理措置義務が,民法の準委任によって善意管理注意義を負っている。
個人情報漏洩事案の対処について,個人情報保護法,金融分野におけるガイドライン第22条-2に,次のように定められている。
「金融分野における個人情報取り扱事業者は,個人情報の漏洩事案等の事故が発生した場合には,二次被害の防止,類似事案の発生回避などの観点から,漏えい事案等の事実関係及び再発防止策等を早急に公表することとする。」
また他の公表義務は,会社法・内部統制の情報伝達,民法上の信義則がある。
原告が真に望む解決の到達点は,個人情報保護法に適う顧客情報データベースの完備である。
準委任契約上の完全履行請求権から,システム補完を求めることも,間接執行によれば,理論的には可能である。しかし,被告の企業体質・経緯から,個人情報保護法施行後6年の長きにわたり放置された管理体制が,今日明日に改変されることは期待できない。
実効性に疑問があり,例え適ったとしても日数を要するとは,たやすく想像が出来る。
公表により多くの国民・契約者に知らしめることによって,心理的緊張感が生まれ,行員意識改革が進み漏洩に対する抑止として働く。また被告銀行本部に対しても,国民・契約者の目が良質な圧力となって,自発的にシステム改変がなされ,個人情報保護法に適う取扱いとなる。
個人情報漏洩の公表の利点は即効性と抑止力であると考える。
隣地から土砂が崩れて来た,または,今まさに崩れて来る危険がある,物権の円満な実現が妨害され,またはされようとしているのであれば,土砂を除去し防護対策を求めることができる。原告の人格権も同様である。人格権の円満な実現のために,漏洩と管理体制不備の公表は必要不可欠な請求である。
C 補足
{1} 訴状23ページ上段,第7アクセスログについての部分で,印刷のみ不可としたシステムは,少数の人権を切り捨てたものであるとした主張について,訂正をする。
本年4月17日,三菱UFJ証券は同社のシステム部長代理が不正に顧客情報データベースから148万人の顧客情報を持ち出し,多数の名簿業者に売却したことを明らかにした。他社員のID,パスワードを使用し,不正アクセス禁止法の疑いも持たれている。
この部長代理のように,アクセス権限上位者の不正の場合,印刷というレトロティックな持ち出し方法ではなく,他の媒体で持ち出すとも不可能ではない。
従って,みずほ銀行の印刷のみを不可としたシステムでは,上位アクセス権限者によれば大量持ち出しの危険性も残されていると言える。アクセスログによって,上位アクセス権限者を含む全行員の履歴を調査が不可能な現状では,大量持ち出しによる多数の人権侵害の可能性も否定出来ない。
{2} 貸金業法改正について
本年6月1日から貸金業法が改正され,クレジット業界と銀行金融機関の情報相互利用が開始されている。
クレジット情報いわゆるホワイト情報からは,買い物履歴,年収まで詳細なデータがリアルタイムで更新され,金融機関からの検索が可能となった。
銀行やクレジットカード,信販会社などが加盟する個人信用情報センターのCICと,消費者金融などの貸金業者などで構成される日本個人情報機構(JIC)が管理している個人信用情報がオンラインで結ばれたのである。いわゆるブラックリストだけが覗けた状況から,「いつ,どこで,いくらの買い物でクレジットカードを使ったか」といったホワイト情報まで手に入り,おおよその暮らしぶりも推察できる。
データベースのマッチングによって,さらに巨大なデータベースにアクセス可能となった現状では,情報の玄関口である銀行の管理体制は,より重要な意味を持ち,責任も重くなったと言える。
係る現状で,みずほ銀行の行員のアクセスログが調査出来ない管理体制は,一度漏洩事故が起きれば,大量かつ詳細なデータの漏洩に繋がり,取り返しの付かない人権侵害が起きる。
{3} 本年4月6日,架空の米国債の投資話を持ちかけて現金をだまし取ったとして,元みずほ銀行本店調査役が詐欺容疑で逮捕された。自行員の良心,性善説に頼るシステムは,個人情報管理者としての責務を放棄しており違法である。
D 争点について
本訴訟の争点は,先ず初めに,{1}漏洩の有無 {2}個人情報取扱システムの2点の事実関係の確認がなされ,次いで請求の合理性や手段の妥当性など二段階で進められるべきである。
事実確認の後に,原告の受忍限度,被告銀行の違法性,また私人間の権利衝突であるから,漏洩を公表することの利益不利益,公表しないことの利益不利益が公の福祉,公の秩序などによって比較衡量がなされ,また被告銀行の公表義務,管理責任なども考慮された上で司法の判断を仰ぐべきである。
E 求釈明
原告は,被告の平成21年5月14日付答弁書に対して以下のとおり,釈明を求める。
釈明を求める理由
個人情報の取扱いは,まさに被告銀行に委ねられている。
「委ねる」と言う字が示す通り,準委任の関係にあると解される。受任者たる被告銀行は,善意管理注意義務(民法644条)及び,報告義務(同645条)を負う。準委任は手段債務であるから,個人情報の取扱いのプロセスに対しての責務であると言える。
漏洩の有無の立証責任についても,個人情報は被告銀行の管理下にあり,取扱いに関する情報は全て被告が握っているのであるから,原告の立証活動は限界である。
本来,立証は原告の責任であるが,違法な個人情報取扱によって,アクセスログという証拠が記録されていない,また記録されていても調査不能の状態である。
被告銀行の責任において立証が不能になり真偽不明に陥っているのであるから,立証妨害の法理が適用されるべきである。
原告は,一年近くに亘り,被告銀行本店に対し,漏洩調査を依頼し交渉したが,有効な返答は得られず,止む無く訴訟に至った経緯である。
本訴訟の重要な争点は,漏洩の有無と管理体制であるから,被告は,訴訟上の信義則からも,積極的に根拠,理由を明らかにされたい。
{1} 被告は,答弁書において,漏洩事案は無かったと主張している。しかし,前田全銀協会長の会見から漏洩時にアクセスログが整備されていなかったこと,またT行員の発言からは,アクセスログは記録していたが,支店ごとに媒体として残すに止まり,調査が不可能であると述べている。このことから,物理的な漏洩調査は不可能であったと解釈できる。実質的な調査らしきものは,支店長による聞き取り調査のみである。
民訴規則79条3項は,「準備書面において相手方の主張する事実を否認する場合には,その理由を記載しなければならない。」と定められている。規定に照らせば,被告の答弁は不十分なものである。
そこで,
(1)漏洩事案が無かったと主張される根拠について釈明を求める。
(2)同時に,物理的な根拠を提供されたい。
{2} (3)平成18年7月5日(O行員八重洲口支店着任日)から同年9月5日(I氏が原告の個人情報を適示した日)の間,アクセスログは残されているのかお伺いしたい。
前田会長の会見から,物理的な人月工数を計算から,全アクセスログの取得は不可能であると考えるが,被告はログの存在を主張している。漏洩時のシステムについて,釈明を求める。
{3} (4)現行のシステムについて管理体制について全行員のアクセスログはデータベース化されているのか否か,釈明を求める。
具体的には,昨年8月14日のT行員の会話の後,変更があったか否かである。新宿支店後の全銀協前田会長会見,T行員の発言は,外部の人間に対して行ったものである。同等のレベルの発言であれば,営業秘密,セキュリティ,保守の問題には抵触するものではないと考える。セキュリティを盾に返答を控えられるのであれば,被告銀行グループのトップと本店行員は,営業秘密を外部に漏らしたことになり矛盾が生じる。個人情報管理責任者として,真摯な返答を望む。
{4} 答弁書3ページ目上段,本案前答弁の理由において,被告は,「本案判決は侵害された権利救済にならず,当該紛争を解決することは期待できないのであるから漏洩事実を,公表させる本案判決を求める訴えの利益を認める余地はない」と主張しているが,理由及び根拠が述べられていない。
{5} 上記主張の理由・根拠及び,紛争解決を期待できる方法を示されたい。
以上,(1)から(5),5点について被告の釈明を求める。
以上
※丸付き数字は、文字化け防止のため, {1}のように、{ }付き数字に置き換えました。
